以前から脚本家の倉本聰さんが好きで、富良野塾の芝居も良く見に行った。
幾つもの歴代公演の中で印象的だった作品のひとつに2009年夏に初演された「歸國-きこく-」がある。
終戦記念日の深夜、南の海で国のために闘って戦死した英霊達が60余年ぶりに蘇り今の日本を目撃、描いている作品。
その中で、あまりにも変わってしまった日本を見て、「オレ達はこんな世界を創る為に闘って来たのか・・・」と、つぶやくシーンがある。
モノが溢れ、経済的には豊かになった日本。一方で、家族との関係、ヒトとヒトの関わりが希薄となった社会を目撃し、悲しみの中、南の海へと戻って行く作品。
もうひとつ、倉本聰さんの代表作のひとつにテレビドラマの「北の国から」シリーズがある。
関東圏で今年の夏に再放送されたこのドラマは、1981年に放送され、北海道富良野の雄大な自然の中で、俳優の田中邦衛さん演じる五郎さんと幼い子供たちの成長を描いた作品。
放送当時、子役の純君とは年齢が近く、自然が好きだった今は亡き父と毎週観ていたことを思い出す。
電気も水道もない小屋での暮らし、都会育ちの少年純君が
「電気が無かったら暮らせませんよッ」「夜になったらどうするの!」
と父親の五郎さんに詰め寄るシーン。
五郎さんは、一言。「夜になったら寝るンです・・・。」
他にも印象的なシーンはたくさんあるが、この初回のシーンは、都会暮らしに慣れ、現代の便利さが当たり前すぎて何か大切なことを忘れてしまっていることに気づかされる。
携帯電話を忘れてしまった時の不安や慌て振り。
解らないことがあると直ぐにスマホやパソコンで検索をして、知った様な気になっている自分。
そんな時に、この倉本聰さんの作品を思い出す。
時々不便さを楽しむ位の余裕があってもいい。本当の豊かさ、幸せッてどんなことなのか。
創造する力を持たなければ、いざという時に思考停止しかねない。
“ 便利は不便のはじまり “ だということを時々意識しながら、
流されない暮らし、生き方を心掛けて行かなければと思うこの頃である。

文 / 菅谷 輝男