
昨年末からこの春にかけて、リフォーム工事を担当しました。34年前に住まい塾で建てた家で、新築当時の建主のご家族の状況が変わったため新しい持ち主に住み継がれることになり、入居前に建物内外のメンテナンスと改装工事を行ったのです。時を経て深みを増した建物は、棟梁を筆頭に設備や外構など様々な職人さんたちの働きでリフレッシュされ、この家の第二章が始まることとなりました。
この改装工事では最初、照明器具をすべて新しいものに交換する案があったのですが、検討の末いくつかのブラケットについては既設のものを継続して使うことになりました。ごくシンプルなガラス製のブラケットですが、今では廃番になり手に入れることができないものです。三十数年余り前のブラケットたちは電気工事担当の職人さんの丁寧なクリーニングできれいに生まれ変わり、室内のあちこちに取り付けられ、新しい住み手の生活を照らし続けることになりました。
以前からの流れなのですが、LEDが普及し始めた頃から特に、器具メーカーのカタログからガラス製の照明がぐっと減りました。照明は電球の種類だけでなく、セードの素材によっても灯りの質感が変わります。艶消しのガラスと白熱灯は、これまですすんで取り入れてきた組み合わせの一つです。今でも作家やデザイナーが作る、メインの場所に使うような照明器具にはガラスをはじめとした美しい素材のものがいくつもありますが、そればかりをすべてに使うわけにはいきません。水回りや廊下などのちょっとした場所を照らす灯りも、小さくても質感のいいものがあってほしい。住まいの質はそんなささやかなところからも変わるのではないかと思います。
文 / 筒井 涼子