染色家の柚木沙弥郎さんが今年1月末に亡くなられました。

日本美術界の重鎮として、100歳を越えた後も現役で大活躍されておられました。

30代の頃、柚木さんのご自宅の設計を担当し、親しくさせていただいた時期があります。　その頃の私は社会人としてはあまりに若く、今考えても恥ずかしいような言葉遣いや態度をとっていたと思います。　そんな私に気さくに食事を誘っていただいたり、楽しそうなお店があると一緒に入ったりと優しく接していただきました。　義娘さんのお話では、ご自分の創作活動やご家族に対してはとても厳しい方だったそうです。　

ご自宅の工事中は色んな事があり、完成まで通常の倍以上の期間が掛かりましたので、柚木さんには大変申し訳なかったという気持ちが今でもあります。　それでも、お会いする度にいつもニコニコしながら優しい言葉を掛けていただき、楽しい思い出を残すことが出来ました。

NHK新日曜美術館でのインタビューで「自分が楽しくなきゃ、いい物は出来ない」と話されていましたが、私達設計者にとっても原石のような光をもった言葉と思っています。

心から尊敬出来る方でした。　ご冥福をお祈りいたします。